ゆっくりと Coffee Grinder
(Coffee Mill)を回すキャンプの朝
「9世紀にエチオピアでヤギ飼いの少年カルディが、ヤギが興奮して飛び跳ねることに気づいて修道僧に相談したところ、山腹の木に実る赤い実が原因と判り、その後修道院の夜業で眠気覚ましに利用されるようになった。」という逸話が最も古いコーヒーの起源です。
エチオピアを起源とし、イスラム世界→トルコ、インドと渡り、ヨーロッパ各地で飲まれるようになったのが17世紀中ごろでしょうか。
1640年ごろにイタリア、1650年ごろにイギリス、1670年ごろにフランス・ドイツ、でコーヒーハウスが開業し、ヨーロッパにコーヒー文化が根付きました。日本では「鎖国」をし始めた頃の話です。
そして、19世紀半ば~終わりごろにかけ、ヨーロッパ各地でコーヒーミルが誕生します。先ずはイギリスのSpong社が肉をミンチにするミンチャーを転用してコーヒーミルを発明。その他の地域は香辛料を挽くミルを原型とし、トルコからドイツ、イタリア、フランスに広がっていったようです。コーヒーミルの挽き歯を比べるとイギリスだけ独特な形状となっている点からもうかがい知ることが出来ます。イギリスのミルは臼のようにすり潰す形状をしており、他方、ドイツ・イタリア・フランスのミルは鋭い歯で粉砕する形状となっているのです。
トルココーヒーはコーヒー豆を非常に細かくして淹れるため、トルコから伝わったドイツやイタリアのコーヒーミルには細挽きが得意な「Mokka」というモデルが存在します。
ゆっくりと、コーヒー豆を挽き、立ち上がる香りを楽しみ、空を眺め、至福の一杯を楽しみたいですね!
世界4大ミルメーカー
イギリス:Spong社 ドイツ:Zassenhaus社、PeDe社
フランス:Peugeot社 イタリア:Tre Spade社
英Spong社:
Spong社製のコーヒーミルは、世界で最初に作られたのコーヒーミルで、ジェームス・オズボーン・スポングが考案したといわれています。Spong社は、その後1980年代にSalterというキッチンスケールで有名な会社に買収され、Salterミルとして販売されました。そのSalter社もミルを製造しなくなり、現在では入手が困難になりました。
重厚な鋳鉄で作られたSpong社のミルは使い込むにつれて鈍い光沢を帯びていきます。スキレットやダッチオーブン同様「育てる」楽しみのあるコーヒーミルです。
独Zassenhaus社:
もともとドイツに十数社あったコーヒーミルメーカーの中で現存するのはロバート・ザッセンハウスが1867年に創業したZassenhaus社のみ。そのZassenhaus社も2006年に倒産しており、現在では新しい資本の元で継続をしています。
職人がひとつひとつ手作りで仕上げていただけあって、そのクォリティは「世界一」と称されてきました。ドイツ製品だけに歯の精度は他社を凌駕しています。特に西ドイツ時代に作られたもの「ライオンに傘」のロゴのいわゆる「オールドザッセンハウス」は非常に高く評価されています。材質、精度共に最も力があった時代です。
仏Peugeot社:
Peugeot…そうです、あの自動車メーカーのPeugeotです。Peugeot社の祖業は織物機、搾油機、穀物製粉機の製造であり、1889年に自動車の製造を始める以前からコーヒーミルを製造していました。
フランス工業品らしく、「心地よさ」がこのミルにも生きており、ドイツ製品ほどの精度はないのですが、心地よい挽き心地とそこから生み出される粒子のそろった挽き豆はさすがです。粒度の調節機構も他国のミルとは異なっており、実にフランス製品らしいつくりとなっているのが魅力の一つです。
Peugeot社は現在もコーヒー、ペッパー、ソルトミルを生産していますが、古い時代の製品の持つ風合いを愉しんでいただけたらと思います。
伊 Tre Spade社
イタリア語で「3本の剣」を意味するTre Spade社は1894年創業。資本が変わりながら現在もコーヒーミルを製造しています。イタリアらしくユニークな形状のミルが多数存在し、ヨーロッパではコレクターも多いミルメーカーです。モデルによっては創業当初から現在まで形を変えずに作られているミルも存在します。
ロゴマークに「FB」の記載があるモデルは、19世紀の終わり頃に熱間鍛造品メーカーのFratelli Bertoldo(FB)社の所有となっていた時期のモデルとなっております。FB社は、1938年にFabbricazione Articoli Casalinghi E Metallurgic SpA.(FACEM)へと再編成されたため、「FB」の記載があるモデルは、1930年代までの製造と推察されます。