ストームランタン
(ハリケーンランタン)の世界
ストームランタンの始祖は何なのか…はおそらく答えが出ないでしょう。
ただ、King of ストームランタンと言えばドイツNier (ニャー)社のFeuerhandランタンです。Feuerhandのランタンは1902年に誕生したといわれています。
燃料は灯油もしくはパラフィンオイルを使用してください。ちょっと高価ですが、パラフィンオイルの方が煤や臭いが少なく扱いやすいです。
実はストームランタンには2つの方式があり、それぞれ「ホットブラスト」「コールドブラスト」と呼ばれています。一般的なストームランタンは後者の「コールドブラスト」と呼ばれる方式です。
ホットブラスト方式は、一度燃焼した熱い空気をバーナーに循環させる仕組み。明るさはコールドブラスト方式に劣りますが、精製度の低い粗悪な灯油でも使用でき、また、燃料の消費量も少なくて済み経済的でした。
それに対し、後から開発されたコールドブラスト方式は、燃焼した熱い空気の一部は循環するものの、殆どが上部から放出され、新しい空気は火屋の下部から取り込まれます。
精製度の高い灯油の使用を前提としており、ホットブラスト方式に比べ非常に明るいのが特徴。そのため、現在では殆どがこの方式となっています。
安価で扱いやすくさほどメンテナンスも必要ない照明器具として、ヨーロッパをはじめ各国で作られていました。また、後に加圧式ランタンを製造していくメーカーもその前の時代にはストームランタンを製造していました。
ドイツ:Feuerhand , Frowo , Hasag , MEWA , Petromax etc…
イギリス:Gremlin , Chalwyn
オーストリア:Ditmar
チェコ:Meva
アメリカ:DIETZ , Embury
日本:別所ランプ(Winged Wheel)
当時の用途はサイズにより様々です。室内や廊下の補助灯、軒先に吊るしたり、懐中電灯のようにつかったり、自転車のライトとしてと、ホントに様々です。
アメリカのDIETZは鉄道向けに販売することで発展していきました。
ガス灯や加圧式ランタンが登場しても、手軽に使用できる灯りとして使われていたようです。日本の別所ランプは当時、外貨獲得のため輸出目的で製造されていました。
また、主要なメーカーは自国の軍隊のために生産していたものも多かったようです。イギリスのChalwynやドイツのFeuerhandは軍用モデルのラインナップがあります。
色々なストームランプを手にしてきた印象としましては、やはりドイツメーカー(FeuerhandとFrowo)のものは金属の厚さや強度、各パーツの取り付けがしっかりしており、クォリティが高い印象です。火屋ガラスの質もFeuerhandが採用していたドイツJenaerGlass社のものは良くできています。因みにコールドブラストの特許をドイツのNier社(Feuerhand)が持っていました。
後に、欧米で電灯が普及し、また、第二次世界大戦終了後、軍での需要が減少すると、電気の普及していないアフリカ、インド、南米、アジアなどの後進国向けに輸出するために生産されました。この辺は加圧式ランタンも同じでした。
小ぶりでちょっと変わったストームランタンを是非キャンプのお伴に加えてみてはいかがでしょうか。
テーブルランプとして、またはロッジテントの軒先につるしたり、トイレに行く時の懐中電灯代わりにしたり、コットンテントならテント内の灯りにしたり。メインのランタンを消した後、ストームランタンの明かりだけで過ごすのも良い雰囲気ですよ!
数あるFeuerhand のストームランタンの中で特徴のあるモデルをいくつか。
Feuerhand 176 Super Baby Spec..
1953年から1970年ごろまで生産されていたモデル。276より1サイズ小さめ。高さ:19.5cm ベースモデルの175よりタンク容量が大きくなっており、燃焼時間が長くなっているのが特徴。
Feuerhand 176 Super Baby Spec.StK
1953年から1970年まで生産されていたモデル。176Eからさらに進化したストームキャップによって、嵐にも耐えられる仕様となった。主に交通機関で使用。
Feuerhand 176E
1940年から1942年まで生産され、第二次世界大戦中のドイツ国防軍で使用されていたミリタリーモデル。バーナーを通常の3分芯から2分芯用に変更し、さらに長時間の燃焼できるようになっている。風を防ぐための丸いキャップが特徴的。
Feuerhand 176Lu (数が少なく海外でも人気があり非常にレアなモデル)
1940年から1942年まで生産され、第二次世界大戦中のドイツ国防軍で使用されていたミリタリーモデル。176Eをベースにしており、空襲時、特徴的なランプシェードを下ろすことによって、灯りを消さずに下方向に照射できるようになっている。また、176E同様2分芯用のバーナーを搭載し、長時間の燃焼が可能となっている。
Feuerhand 75 Atom (数が少なく海外でも人気があり非常にレアなモデル)
1936年から1943まで生産されていたFeuerhandシリーズの中では最も小さいモデル。高さ:16cm 当時の広告をみると、「イルミネーション」
「補助灯」として使われたことがうかがえる。
Feuerhand 75 Atom StK (数が少なく海外でも人気があり非常にレアなモデル)
1940年1942年まで生産されたモデル。ストームキャップを搭載。アーミーグリーンのカラーリングのものは、第二次世界大戦中のドイツ国防軍で使用され、ブラックのカラーリングのものは主に自転車やバイクのテールライトとして使われたといわれている。